魚眼日記

その女、七転八倒につき

6月6日(日) 乾杯ちゃん

「検便、出してくださいね」



レバーに足をかけた瞬間、コヤミは思い出した。




容器は稽古場のカバンの中にある

その距離わずか10m

提出期限は明日の朝

この機会を逃したら次はない



GO!!!



勢いよく個室を飛び出し廊下を走った

稽古場へ殴り込みカバンから容器を取り出し

再び現場へ向かった


完璧だ

事は計画通りに運んでいる

コヤミはこのミッションの成功を確信した

ラストスパートをかけたそのとき



「公演いつやったっけ?」



あと数歩のところで宮田さんに呼び止められてしまった


今この瞬間にも誰かに流されてしまうかもしれない


一分一秒が命取りなのだ



「もうすぐです!」



コヤミは軽妙に宮田さんをかわし、便器へ急いだ



「セーーーーフ!!」


そこかしこで小人がクラッカーを打ち鳴らした



夜はリッチに出勤


コヤミはこの自己満足を祝うかのようにお客さんと酒を酌み交わした


色っぽい話をしている脇で小人がつぶやく


「ま、私カバンにウンコ入ってますけど」


小人を掴もうとして


やめた




綺麗なものと汚いもの

ウソとホント


それはいつだって隣り合わせで

いつ逆転するかなんて分からない


生きている


それだけで人は滑稽だ


だからあたしは生きることをやめられない




  1. 2010/06/06(日) 11:25:21|
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